事故による膝関節脱臼の治療について
交通事故の衝撃によって膝関節に強い負荷がかかると、「膝関節脱臼」が発生することがあります。膝関節は、大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(膝のお皿)から成る重要な関節で、脱臼すると歩行が困難になり、適切な治療を行わなければ長期間の後遺症が残る可能性があります。特に、血管や神経が損傷するリスクが高いため、早急な対応が必要です。
交通事故後の膝関節脱臼の主な原因
1. 事故時の強い衝撃
バイクや自転車事故、歩行中の事故などで転倒し、手を地面についた際に肘に強い衝撃が加わると、関節が外れて脱臼することがあります。
2. 足の過度なねじれや伸展
事故の際に膝が無理に捻られたり、極端に伸ばされたりすると、関節が通常の可動域を超えてしまい、脱臼を引き起こします。
3. 高速での衝突による膝の負傷
車に乗っている状態で衝突した際、膝がダッシュボードに強くぶつかると、「ダッシュボード損傷」と呼ばれる膝の脱臼や靭帯損傷が発生することがあります。
4. 靭帯や筋肉の損傷を伴うケース
膝関節脱臼は、通常、前十字靭帯(ACL)、後十字靭帯(PCL)、内側側副靭帯(MCL)、外側側副靭帯(LCL)などの靭帯損傷を伴います。そのため、単なる脱臼ではなく、複雑な損傷となることが多いです。
膝関節脱臼の主な症状
強い痛み:膝を動かそうとすると激しい痛みが生じる。
膝の変形:膝関節が不自然な位置にズレている。
腫れや内出血:血管や靭帯の損傷によって膝周辺が腫れる。
可動域の制限:膝を伸ばしたり曲げたりすることができなくなる。
足のしびれや冷感:膝関節脱臼では、膝の後ろを通る「膝窩動脈」や神経が損傷することがあり、足のしびれや冷たさを感じる場合がある。
膝関節脱臼の種類
1. 前方脱臼
大腿骨が後方に、脛骨が前方にズレるタイプ。最も多くみられる脱臼で、膝に強い衝撃が加わることで発生します。
2. 後方脱臼
脛骨が後方にズレるタイプ。ダッシュボード損傷のように、膝が強く押し込まれた際に発生することが多いです。
3. 内側脱臼・外側脱臼
横方向からの強い衝撃で、膝関節が内側または外側にズレるタイプ。靭帯の損傷を伴いやすく、手術が必要になることもあります。
4. 回旋脱臼
膝が捻られることで発生する脱臼。靭帯の損傷だけでなく、軟骨や半月板の損傷を伴うことが多いです。
膝関節脱臼を改善するための対策
1. すぐに医師の診察を受ける
膝関節脱臼は、血管や神経を損傷するリスクが高いため、迅速な医療対応が必要です。整形外科でレントゲンやMRI検査を受け、損傷の程度を確認しましょう。
2. 応急処置を行う(RICE処置)
病院に行くまでの間は、以下の方法で応急処置を行いましょう。
Rest(安静):膝を動かさず、できるだけ負担をかけない。
Ice(冷却):氷や冷却パックで膝を冷やし、腫れを抑える。
Compression(圧迫):無理に圧迫せず、包帯で軽く固定する。
Elevation(挙上):足を心臓より高い位置に置き、腫れを防ぐ。
3. 医師による整復(関節を元に戻す)
整形外科で、関節を正しい位置に戻す「整復」を行います。脱臼の程度によっては、麻酔を使用することもあります。
4. 固定とリハビリ
脱臼後は、膝関節の安定性を回復させるために、ギプスや装具で固定する必要があります。その後、適切なリハビリを行い、関節の可動域を取り戻していきます。
5. 靭帯損傷を伴う場合は手術を検討
膝関節脱臼は、靭帯の損傷を伴うことが多いため、重度の場合は手術が必要になることがあります。手術後は長期間のリハビリを行い、膝の機能を回復させます。
6. 筋力強化と再発予防
膝の安定性を高めるために、太ももやふくらはぎの筋肉を鍛えることが重要です。特に、大腿四頭筋やハムストリングスを強化することで、膝への負担を減らすことができます。
まとめ
交通事故による膝関節脱臼は、強い衝撃や足のねじれによって発生し、靭帯や血管、神経の損傷を伴うことが多い重症の怪我です。迅速に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。治療後はリハビリを継続し、膝の機能を回復させながら、再発を防ぐための筋力強化を行いましょう。